プロセッサを支える技術 第 2 章

第 2 章は「プロセッサの変遷」です.

コンピュータ以前

まずはコンピュータ以前の計算装置ということで,そろばんの説明から始まっています.とあるゲームでは武器として使われていましたが,計算の道具として馴染み深い存在です*1

むしろ,最近のいわゆるコンピュータは計算機と呼ぶことに躊躇します.内部では想像を絶するのほどの計算をしているわけですが,パソコンといえばインターネットという人もたくさんいて,エンターテイメント色が強いですから….パソコンを計算機として扱う人の割合は今後も減る一方でしょう.

素子

「もとこ」じゃなくて「そし」です.

プロセッサとして最初に認識した存在が Pentium という私にとって,真空管といえば歴史の遺物という印象です.博物館で観賞する骨董品のような感覚でしょうか.実際に触ったことがないので,どうもピンときません.

命令アーキテクチャ

プログラム内蔵方式や仮想記憶,マルチプロセスにメモリ管理機構などが説明されています.実装されているのが当たり前,隠蔽されていて意識する必要もなし,という時代になってプログラミングを始めた身としては,先人たちに感謝するよりほかにありません.

マイクロアーキテクチャ

パイプライン,スーパースカラ,分岐予測にキャッシュなどの説明になっています.この辺りになると,馴染み深いキーワードという印象があります.

「パイプラインが深くなると,分岐予測が外れたとき,投機実行していた分の無駄が大きくなって…」なんていう話は Pentium 4 のおかげで何度も目にしたものです.その名もスーパーパイプライン….プロセッサの消費電力が 100W を超えて,個人的には有り得ないと思っていた時代です.クロック周波数の限界,そしてマルチコアへの舵取りという,「そのとき歴史が動いた」な転換点に位置するプロセッサということもあり,強く印象に残っています.どちらかというと悪い意味で….

マルチコアに絡めて少し触れられているプロセッサの発熱については,「CPU 目玉焼き」で検索してみると参考になるかもしれません.今となっては懐かしい話です.

おわりに

5 年もあれば常識があっさりと置き換えられる恐ろしい時代です.マルチコアのプロセッサにしても,2005/2006 年あたりになって出回り始めたはずなのに*2,今となっては当たり前の存在です.いつの間にやら 6 コアのプロセッサが普通に手に入る時代に….

まだ若いつもりなのですが,「昔と比べて便利になった」と思います.でも,マルチコア,仮想化,GPGPU,HDD/SSDTPM,…実にややこしくなっています.その上に OS があって,ミドルウェアを入れて,サーバサイドの開発をして,フロントエンドを用意すると考えた場合,専門家を育てるコストはいかばかりかと不安にもなります.

そういうわけで,新しく情報系の学科に入る方たちにとっては,「つよくてニューゲーム」な楽しみもあるかもしれませんが,膨大な基礎知識を短期間で詰め込み,その上に応用・実践までこなさなくてはならないという「無理ゲー」になっているかもしれません.当然,セーブ・ロード・リセットはなしです.「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の心意気で,どうぞ楽しんで行ってください.

*1:残念ながら,私は珠算できない人です.

*2:サーバ用途であれば,もっと前からあると思います.