図書館ウェブサイトに対するアクセスの件

概要

簡単にまとめてしまうと,逮捕された男性のプログラムには違法性がなく,むしろウェブサイト側のプログラムに不具合があり,その不具合のせいでウェブサイトがダウンしていたのではないかという話でした.

…が,いろいろと記事が追加されて,「不具合がありました」というだけでは終わらないかもしれない状態です.

そもそも,この事件で問題になっている程度のアクセスに耐えられないようなシステムなら,ご家庭の PC でも簡単に落とせます.というか,落とそうなんて思っていなかったのに落ちてしまったという事件ですし,それなりにウェブについて知っている人なら「このくらいで落ちるわけがない」と考えるでしょう.

引用いろいろ

しかし、朝日新聞が依頼した専門家の解析によると、図書館ソフトに不具合があり、
大量アクセスによる攻撃を受けたように見えていたことが分かった。
同じソフトを使う全国6カ所の図書館でも同様の障害が起きていたことも判明。
ソフト開発会社は全国約30の図書館で改修を始めた。

(朝日新聞)図書館HP閲覧不能サイバー攻撃の容疑者逮捕、だが…
http://www.asahi.com/digital/internet/NGY201008200021.html

かなり派手な不具合だったようですから,ソフト開発会社が気づいていなかったとは考えにくいのですが….

図書館側へのアクセスは14日間に3万3千回で、秒間約1回。
数万円で買えるコンピューターでも1日数万回や秒間10回はアクセスに耐えるとされ、むしろ少ない数だ。

(朝日新聞)なぜ逮捕?ネット・専門家が疑問も 図書館アクセス問題
http://www.asahi.com/digital/internet/NGY201008210001.html

2 週間もかけて 3 万 3 千回のアクセスとは,実に手緩いです(ぉ.

「サイトがダウンするから止めて」というメールが送られて,「じゃあ,止めます」という返事で終わる話だと思います.メールアドレスが分からなければアクセス制限が妥当でしょうか.少なくとも,警察が出てくるほどのことではないでしょう.

岡崎の図書館では、今年3月に閲覧できなくなった。
取材によると、MDISは直後にアクセス記録から原因を把握していたが、
図書館側に他の図書館で同じような閲覧障害が起きていたことを伝えていなかった。

旧ソフトは現在も約30カ所の図書館で使われている。
ある図書館の関係者によると、新ソフトは06年以降に新しくMDISと契約したか、
大規模にコンピューターを増強、更新した場合に限って導入されていた。
旧ソフトを使うある図書館の職員は「ホームページが閲覧しにくくなるのは、
コンピューターの性能が低いからだとMDISに言われた」と話す。 

(朝日新聞ソフト会社、図書館側に不具合伝えず アクセス障害問題
http://www.asahi.com/digital/internet/NGY201008210003.html

図書館の職員による証言だけでは何とも言えませんが,きな臭い話が出てきました.単純に人員不足で対応できなかったというような可能性も考えられますが,多少えげつないやり方があったのは事実かもしれません.こういうことってよくあるのでしょうか…?

事件に直接関係のある話ではありませんが,会社の印象は悪くなりました.

「(男性の自作プログラムに)違法性がないことは知っていたが、
図書館に了解を求めることなく、繰り返しアクセスしたことが問題だ」

「図書館側のソフトに不具合はなく、図書館側に責任はない」

(朝日新聞)図書館長「了解求めないアクセスが問題」 HP閲覧不能
http://www.asahi.com/digital/internet/NGY201008210009.html

このままの発言があったとは思えないし(思いたくないし),よく分かっていないことが発言の理由だと思います.とはいえ,「新着図書ページが使いにくかったので」プログラムを動かすに至ったわけですから,そのシステムを導入したことだけでも責任があると思います.ここまで大事になったのも,システム管理者の知識不足が原因の一端でしょう.後,ソフトウェアには不具合があったようですけど…?

1時間のアクセス数が400回を超えただけでHPが閲覧できなくなるという古いものだった。

(毎日新聞岡崎市立図書館:ソフト古く閲覧困難に HP大量アクセス
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100822k0000m040070000c.html

さすがに,400 回/時でアクセス不能はさすがにないでしょうから,記事の方が間違っているか,あるいは大袈裟な表現になっていると思います.多分….

「通常の利用者とは違う方法で大量のアクセスがあり、想定していなかった。
図書館には非がなく、男性のプログラムの方法がまずい」と話している。

(毎日新聞岡崎市立図書館:ソフト古く閲覧困難に HP大量アクセス
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100822k0000m040070000c.html

平均的な利用者ではないかもしれませんが,間違いなく,システムの利用者です.迷惑に感じたとしても,想定していなかったから不正なアクセスというのは無理があると思います.そもそも,使い勝手の問題で個人がなんとかしようと考えるに至った時点で,そのシステムには少なからず問題があったのでしょう.

まとめ

専門家(非一般人)の立場で「常識的に考えて」問題ないと判断するような内容でも,警察沙汰になることがあるという事件であり,私は非一般人なので,今後の展開が気になります.個人的には,男性の行動には問題がなかったという展開が望ましいところです.

後,クライアント(ユーザ)がシステムについて知識を持っていないということは意識にありましたが,実はサーバ(管理者)もシステムについて知識を持っていないということについては考えに至っていませんでした.冷静に考えてみると,あまり良い状態ではないものの,そうなってしまうことは分かります.